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  • 追い求める 剛腕+精密機械

  • 「心」も進化 極限の集中力
  • 追い求める 剛腕+精密機械
    まだまだ成長段階にある」
     「ノーラン・ライアンとグレグ・マダックスを足したような投手。
    昔からそうだし、今でも変わりません」

     「理想の投手像は?」と松坂に聞くと、返ってくる言葉はいつも同じだった。

     46歳まで現役を続けて100マイル(約160キロ)の直球を投げた「剛腕」と、抜群の制球力を誇る「精密機械」。
    つまり、力と技術を最高度のレベルで融合させることが松坂の目指すところだ。
    とんでもなく高いハードルだが、松坂自身は実現不可能ではないと信じている。

     大リーグで投げたい気持ちはずっと胸に抱いていたが、米国の打者を想定して球を磨いた訳ではない。
    「純粋に自分の持っている力を上げれば、自然に(大リーグに)近づける」。よりよい投手になるという欲求に従い、そこにたどり着くことが出来れば、舞台はどこであれ、自分のスタイルで生きていけるはずと思っている。

     体重移動やステップ幅、球のリリースポイントから、投げる際の腰の位置まで。
    細かく設定したテーマを、一つ一つクリアした。
    新しい球種にも貪欲(どんよく)に挑んだ。
    「投球の幅がグンと増える」と、2年前には130キロ台後半で変化するフォークを本格導入した。

     ストレートの最速は156キロ。
    1球のスピードにこだわる時期もあったが、やがて、先発完投の理想型は球数が増えても球威を維持することだと考えるようになった。

     七〜九回の終盤に注目してほしい。
    今季の被打率は序盤(一〜三回、2割2分5厘)、中盤(四〜六回、2割2分3厘)に比べて七回以降はわずか1割5分。ゴール(勝利)が見えると、ためていた力を一気に爆発させる。
    最速表示を記録するのも常に試合が大詰めを迎えてから。昨年5月25日のヤクルト戦、九回二死から最後の136球目が最速の154キロ。
    今年9月13日の日本ハム戦、九回二死、最後の121球目で153キロをはじき出した。

     打者をねじ伏せる一方、力を持て余して、それを制御できない時には四死球が絡んであっという間に崩れてしまう――。
    ある時期まではもろいイメージもあった。
    だが「最近2年くらいかな、ようやく粘りが出てきた」。言葉を裏付けるように無駄な球は目立って少なくなった。2000年に5・31もあった1試合平均の与四死球率は今季は1・79に減った。

     だが、「脂が乗り切っていない。まだまだ成長段階にあると思う」。
    26歳の頭の中にある究極の理想はまだ遠い場所にある。
    米国に行ってもそれを追い続ける。


    「心」も進化 極限の集中力 
    西武が松坂の大リーグ移籍を容認した11月1日。
    報道陣に囲まれた松坂は「アメリカを意識して練習し、向こうでやりたい気持ちがどんどん強くなり、やれるという自信がようやく出来た」と言い放った。自信を支えているものの一つは、感情の起伏を抑えて投球に集中する精神的な強さだ。

     西武時代はマウンドの上では周りを寄せ付けない独特の雰囲気を漂わせる松坂がいた。
    「(松坂)大輔のこの世界には入っていけないなぁ」。
    荒木大輔・西武投手コーチは、自分の投球に極限まで集中する姿に圧倒されたことがあった。
    ベンチの方向をちらちらとのぞいたり、投球をためらったり――と、ピンチに陥った投手が当たり前のように出すサインだが、松坂に限っては一切なかった。

     それでも走者を背負った時や失点した時、一呼吸置こうと、荒木コーチがマウンドに歩み寄ったことがあった。
    それに対し、松坂は時折不満げな表情を見せることもあった。
    「余計な心配をかけたくないからだろう。こちらが声をかける前に、自分の投球の問題点を切り出してきたこともある」と荒木コーチ。
    西武の主力内野手は「全部自分の責任で解決する。
    こっちから間をとりに行く必要はほとんどない」と振り返る。
    西武ベンチがタイムをかけることは目に見えて減った。

     マウンド上やベンチの中で気持ちを乱したり、集中していない姿をさらけ出せば、信頼感を勝ち取ることは出来ない。
    松坂としては周りに信頼してもらえるエースらしい態度を貫いただけなのだろう。

     プロ入りしてすぐ、気持ちをコントロールして投球に集中する必要性を痛感した。
    登板前夜にクラシック音楽を聴き、心を落ち着かせ、投球のイメージを膨らませるなど、様々な精神面の鍛錬に努めた。
    最初のころは、ノックアウトされると、ベンチ裏で怒りを表に出すことがあったというが、今では悔しい敗戦を喫しても冷静に自分の投球を振り返ることが出来る。

     以前は、登板数時間前からピリピリと神経を張りつめさせていたが、短時間で集中力を高める力をつけた。
    今は選手サロンで仲間らと雑談に興じた後、試合開始直前に西武ドームの長い階段を一歩一歩下りる数分間で一気に「戦闘モード」に切り替えるという。
    気持ちを自分で制御する力がついた証拠だ。

     松坂は「向こう(大リーグ)で燃え尽きたい」という覚悟を持っている。
    今持っている精神的な強さを、新しい世界でも貫けば、周りが期待する結果も自然とついてくるはずだ。
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